【在宅看護】高齢者の失禁・おむつの皮膚トラブル
神戸・六甲で開院している在宅医療・一般内科・血液内科の赤坂クリニック/スナメリ訪問看護ステーションです。
前回お話したように、高齢者の皮膚は皮脂分泌の減少により乾燥し、皮膚の菲薄化などによりバリア機能が低下します。そうすると刺激に対して弱くなり、細菌などに感染しやすくなります。尿・便の失禁により紙おむつなどを使用している場合は、皮膚トラブルが起こりやすく、褥瘡になる原因にもなります。今回は失禁時の皮膚トラブルのケアについてお話します。
失禁に伴う皮膚トラブルの原因
- 尿は弱酸性ですが、放置していると成分が分解され、アンモニアが生成されアルカリ性になります。尿路感染を起こしている尿もアルカリ性です。また便もアルカリ性です。アルカリ性になると皮膚のphが上昇します。アルカリ性が皮膚を保護している皮脂を取り除き、皮膚のバリア機能を低下させます。そうすると、かぶれやすくなったり感染しやすくなります。
- おむつは漏れを防ぐ構造なので、汗や尿などの水分で高温多湿状態になっており、皮膚がふやけてしまいます。ふやけた皮膚は、軽くおむつなどで擦るだけで傷つきます。また尿や便の老廃物や細菌などが皮膚に付着して刺激を受けます。
- また、排泄ごとに繰り返す洗浄・清拭によって皮膚表面の皮脂膜が消失されます。そうすると皮膚表面はアルカリ性化し、バリア機能が低下します。
失禁後のスキンケア法
洗浄
弱酸性の洗浄剤を使い、こすらないように洗浄する。
38℃程度の温湯を使い、十分に洗い流す。
保湿成分が配合された清拭剤を使用する。
保湿するケア
角質層内で水分保持する皮膚保湿剤(ヒルドイドなど)で、皮膚表面に被膜を作り水分喪失を防ぎます。
保護するケア
また排泄物による化学的な刺激などの外的刺激から保護する効果のある皮脂代用品(ワセリンなど)を使用します。
洗浄後、便が付着する部分には、広範囲に保湿クリームや撥水性クリームを塗ります。アルカリ性の刺激を中和するクリームなどもあります。これらを塗ることによって皮膚に薄い保護膜をつくり、直接排泄物が皮膚に付着することを防ぎます。
失禁による皮膚トラブルのスキンケアは、予防的なスキンケアを継続することが大切です。皮膚を良い状況で保つことは褥瘡予防にもなります。清潔に保ち、保湿・保護をしっかり行いましょう。