症例解説

症例解説

血液内科・腫瘍内科の主な疾患

白血病の原因と種類

白血病とは?

白血病は「血液のがん」といわれる病気で、血液の中にある白血球という本来ウイルスを攻撃する役割を持つ細胞が、がん化して異常に増えてしまう病気です。
以前は白血病は非常に死亡率が高い病気でしたが、医学の進歩により、現在では治癒が期待できる病気の1つとなっています。

白血病の種類

白血病は増える「白血球の種類」と「病気の進行度合い」によって4つの種類に分類され、白血病の種類によって治療方法が変わってきます。

  • 急性骨髄性白血病
  • 急性リンパ性白血病
  • 慢性骨髄性白血病
  • 慢性リンパ性白血病

1. 急性骨髄性白血病

急性骨髄性白血病(AML:Acute Myeloid Leukemia)は、造血幹細胞に何らかの遺伝子異常がおこり、癌化した細胞(白血病細胞)が増殖する造血器腫瘍です。放射線治療や化学療法後に発症する二次性白血病以外の原因は不明です。確定診断には骨髄検査や骨髄生検(骨髄組織の一部を直接採取する方法)が必要です。骨髄中の芽球が20%以上で急性白血病と診断し、各病型に分類します。AMLは病状の進行が速く、急に症状が出現することがあるので、早期の診断と治療が重要です。治療は抗がん剤で寛解導入療法を行います。寛解とは骨髄中の白血病細胞が5%以下の状態です。寛解が得られた後、地固め療法を行います。抗がん剤で5%以下になった白血病細胞を死滅させます。治療後の白血病の再発を防ぐために行われます。地固め療法後、寛解を維持している場合は経過観察を行う場合があり、年齢や状態によっては造血幹細胞移植を行います。

2. 急性リンパ性白血病

急性リンパ性白血病(ALL:Acute Lymphoblastic Leukemia)は、白血球の一種であるリンパ球が幼弱な段階で悪性化し癌化した細胞(白血病細胞)が増殖することで発症します。6歳以下の小児に多く、成人の1年間の発症率は約10万人に一人程度です。ALLも病状の進行が速く、急に症状が出現することがあるので、早期の診断と治療開始が重要です。正常な血液細胞が作られないため、白血球減少による感染症状、赤血球減少による貧血、血小板減少による出血傾向などがみられます。ALLは中枢神経系に浸潤しやすく、頭痛・吐き気・嘔吐・手足のマヒなどの症状を起こすことがあり注意が必要です。診断には骨髄検査や画像検査のほか、髄液検査を行うことがあります。治療は抗がん剤を使用し、フィラデルフィア染色体陽性の場合は分子標的薬も併用します。寛解導入療法、地固め療法、維持療法の順番で行い1~2年行います。年齢や状態によっては造血幹細胞移植を行います。

3. 慢性骨髄性白血病

慢性骨髄性白血病(CML:Chronic Myeloid Leukemia)は、骨髄中で白血球が必要以上に作られる病気で、造血幹細胞の遺伝子に異常が起こり発症します。病気の進行はゆっくりで、初期には症状はほとんどありません。しかし急性期に移行した場合、急性白血病と同様の症状(発熱、貧血、出血傾向など)がみられます。CMLの95%以上の患者さんにフィラデルフィア染色体という遺伝子がみつかっており、この染色体がCMLの原因となるbcr-ablという遺伝子を作っています。治療は分子標的薬が中心です。急性期の治療には、分子標的薬の増量・変更、化学療法の併用や造血幹細胞移植を検討します。

4. 慢性リンパ性白血病

慢性リンパ性白血病(CLL:Chronic Lymphocytic Leukemia)は、白血球の一種であるリンパ球のうち、成熟した小型のBリンパ球(感染から守る役割)が悪性化し緩徐に増殖する病気です。日本での発症は少なく年間10万人に1~3人前後です。発症してもゆっくりした経過で、初期ではほとんど症状はありませんが、病気が進行すると発熱、倦怠感、体重減少、寝汗などがみられ、痛みを伴わないリンパ節腫脹などの症状が現れます。診断は血液のリンパ球の細胞表面をフローサイトメトリーで確認し、骨髄検査や画像診断を行い、病期分類をします。CLLは無症状の場合は経過観察を行い、進行した場合には抗がん剤治療を行いますが長期にわたり病勢コントロールが可能です。また血幹細胞移植を行う場合もあります。

5. 成人性T細胞性白血病/リンパ腫

成人性T細胞性白血病/リンパ腫(ATL:Adult T-cell Leukemia-lymphoma)はHTLV-1というウイルス感染で生じる血液がんです。
感染経路は母乳による母子感染・輸血・性交による感染で、九州・沖縄地方など西日本に多くみられます。
HTLV-1ウイルスに感染していても発症しない人をキャリアといいます。感染から発症まで約30~50年の潜伏期間があり、40歳を超えるまでATLの発症はほとんどなく、40歳を超えると年間にキャリア1000人に1人の割合で発症し、生涯発症率は5%といわれています。ATLは急性型、リンパ腫型、慢性型、くすぶり型に病期分類されます。急性型、リンパ腫型、予後不良因子をもつ慢性型は化学療法の治療が必要ですが、予後不良因子をもたない慢性型やくすぶり型は経過観察を行います。

白血病の症状

白血病であらわれる症状は非常にさまざまです。また白血病特有の症状はありませんが、主に次のような症状が現れることがあります。

貧血症状

顔面蒼白、全身の倦怠感、運動時の動悸・息切れなど

感染症状

発熱、咽頭の痛み、せき、下痢、頭痛、嘔吐、リンパ節の腫れ等

出血症状

内出血による紫斑(しはん)、鼻血、歯茎からの出血等

白血病の治療

白血病の治療はその種類によって変わるため、血液検査によって白血病の種類を診断することが治療の第1歩になります。

抗がん剤による治療

急性の白血病の白血病の場合、抗がん剤を用いた化学療法を行う必要があります。また、慢性リンパ性白血病の場合も、病気が進行した場合には化学療法で病気の進行を抑えます。慢性リンパ性白血病は、まだその原因が特定されておらず、定期的に医療機関に通院して、病気の進行度合いを確認する必要があります。

一方、慢性骨髄性白血病の場合は進行度合いによりますが、イマニチブ(グリベック)という内服薬による治療をはじめに行うことが多いです。